銭形
2009-07-13 19:45:35 (14 years ago)
Vol.8 2009.7.13
丑久保さんと私は30年くらい前に知り合いました。ちょうど丑久保さんが文化庁の奨学生としてニューヨークにいらした頃のことです。
その後、丑久保さんが海にボールを置く計画を立て、なんとおもしろいことを考えるのだろうと思った私は、特大のボールをわけてもらえないかと丑久保さんにお願いすることになりました。その時のボールが写真左側の大きいボールです。私の父は美術品が好きでいろいろな作品を買い集めておりました。しかし、私自身がお金を出しても欲しいと思った作品は丑久保さんのボールが初めてなので、その時のことを今でもよく覚えているのです。
また、右側の小さいボールにもたくさんの思い出が詰まっています。20年前、私どもの銀座のお店「銭形」のビルの地下に、「親父の部屋」というギャラリースペースにもなる部屋を作りました。しかし、ギャラリーとしてだけでは成立せず、宴会のお客様も部屋に入れることとなりました。その時に丑久保さんから譲っていただいたのがこのボールです。作品としては小さいものですが、私にとってはこの木目の美しいボールこそが最高の作品だと思っていましたので、譲っていただいたときは大変うれしく思いました。
そしてお客様にもこの作品をじかに触れてもらおうと、「親父の部屋」に転がしておいたのですが、これが大失敗でした。冬場、畳代りに敷いたホットカーペットの上にボールを置いたのですが、木は生き物、熱によって作品が割れてしまったのです。これにはさすがの丑久保さんも怒りました。何とか作品の穴は埋めてもらいましたが、このときのことは今でも大変申し訳なく思っています。
いまはビルの改装などをした関係で、地下に「親父の部屋」はありませんが、お店はビルの4階と5階で営業しているので、これらのボールもそちらに展示しています。また、丑久保さんのその他の作品も階段などにたくさん飾ってありますので、ご覧になりたい方はぜひ一度、「銀座・銭形」まで足をお運びください。
以上、ボールの近況でした。
C区 Y.S.